従来のMNP(ツーストップ方式)の乗り換え手順の問題点
MNPサービスの開始
携帯電話番号ポータビリティ(MNP)は2006年10月24日に開始されました。
MNPは「Mobile Number Portability」の頭文字を取ったもので携帯会社を変更しても電話番号を変えずに携帯電話を引き続き利用できる制度です。
この電話番号を持ち運びできる制度を利用することで、携帯会社を乗り換えても新しい携帯会社にて電話番号を新たに取得する必要がなくなりました。
他のキャリアに乗り換える際に電話番号が変わってしまうことに抵抗を感じる利用者が多く、日本の携帯市場において健全な競争促進によるサービスの向上を目的として導入されています。
従来方式の問題点
そんなMNPですが、従来の乗り換え手順では事前にMNP予約番号を発行する必要がありました。
予約番号の発行には以下のような、いくつかのデメリットがございます。
- 手数料がかかる場合がある
- 混雑状況によっては発行に時間がかかる
- 店舗に行く場合、本人確認などが必要になる
- 15日の有効期限がある
MNPワンストップ方式の導入
そこで、2023年05月24日からは一部の携帯会社間のWeb手続きにおいて、MNPワンストップが利用可能となりました。
それにより、乗り換え先の携帯会社のWebサイトにてご契約のお申込みをするだけでMNP手続きを進める事ができるようになりました。
そのため、従来までの転出する際に転出元の携帯会社にてMNP予約番号を発行するといった煩わしい手続きなどが一切不要となります。
MNPワンストップ方式が導入された背景

参考元:総務省「 日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」より
2021年2月以降、携帯電話事業各社から従来に比べて低価格な新しい料金プランの提供が開始され、携帯電話事業各社による競争はより一層、激化しました。
上記の図は総務省が2023年9月に実施した利用者意識調査の結果ですが、未だに約半数近くの携帯ユーザーが旧プランを契約しています。
新プランに乗り換えるつもりがない理由として「特に理由はない」「手続きを行うことが面倒」といった声があり、そのような人達でも携帯会社間の乗り換えをしやすくするためには、乗換え手続きの簡素化が必要不可欠となります。
そこでワンストップ方式を導入した事によって、携帯ユーザーはより自分に合った低価格化プランに簡単に乗り換える事が可能となり、以前よりも携帯料金の支出を減らしやすくなりました。
手順について
MNPと一口に言っても現在、MNPの手順には「ワンストップ方式(新方式)」と「ツーストップ方式(旧方式)」の2種類がございます。
ネット上にて乗り換え手続きをする場合、転出元と転出先の携帯会社がMNPワンストップに対応してさえいれば、誰でも新手順であるワンストップ方式を利用することができます。
●ツーストップ方式(従来方式)
MNPの転出手数料はWeb上で行えば無料となります。
店舗での発行ですと本人確認書類や発行手数料がかかる場合がございます。
ご契約中の携帯会社のHPなどで事前にチェックされた上でお手続きされる事をオススメいたします。
ご契約中の携帯会社にてMNP予約番号が発行されたら、メモ等に控えて乗り換え先の携帯会社に契約を申し込みます。
乗り換え先の携帯会社の契約が完了して、無事に回線が切り替わると乗り換え元の携帯会社との契約は自動で解約されます。
今まで利用していた電話番号が乗り換え先の新しい携帯会社で利用できるようになります。
▼ツーストップ方式による乗り換えイメージ図

●ワンストップ方式(新方式)
新たに契約予定の携帯会社のWebサイトにてMNPワンストップの手続きを進めていくと現在、契約している携帯会社のWebサイトに自動で移動し、解約にあたっての重要事項などの説明が表示されます。
重要事項を確認し、同意した後は再び乗り換え先の携帯会社のWebサイトに移動します。
乗り換え先の携帯会社のWebサイトにて契約が完了し、回線が無事に切り替わると、その時点で乗り換え元の携帯会社との契約は自動で解約されます。
今まで利用していた電話番号が乗り換え先の新しい携帯会社で利用できるようになります。
▼ワンストップ方式による乗り換えイメージ図

「ワンストップ」「ツーストップ」どちらであっても引き継がれるのは電話番号のみ
ここで注意して頂きたいのが、どちらの方式であってもSIMに引き継がれる情報は電話番号のみという事です。
キャリアメールやキャリアでのポイントといった情報は解約と同時に抹消となります。
そのため、キャリアメールを新しい携帯会社でも引き継ぐ場合には別途サービスのお申し込みが事前に必要となります。
<大手キャリアでは以下のようなサービスが提供されています。>
●ドコモ・・・『ドコモメール持ち運び』サービス
●au・・・『auメール持ち運び』サービス
●ソフトバンク・・・『メールアドレス持ち運び』サービス
●楽天モバイル・・・『楽メール持ち運び』サービス
MNPワンストップを利用する上での注意点(デメリット)
- MNPワンストップはオンラインでの受付のみ
- 全ての携帯会社がMNPワンストップに対応しているわけではない
- お手続き中に転出元へのマイページへのログインが必要
- Web上での手続きとなる為、SIMの受け取りまでに数日かかる
MNPワンストップはオンラインでの受付のみ
MNPワンストップは対象事業者間でのオンライン手続き限定で利用できるMNPの乗り換え方法になります。
そのため、店舗にてスタッフからのサポートを受けながら乗り換え手続きを行いたい方にとっては不向きとなります。
どうしても、ご不明な点がある場合には乗り換え元や乗り換え先の携帯会社のチャットサポートやオンラインサポートにて各自でお問い合わせ頂く形となります。
全ての携帯会社がMNPワンストップに対応しているわけではない
すべての携帯会社がMNPワンストップ方式に対応しているわけではありません。
そのため、事前に乗り換え元と乗り換え先の携帯会社がワンストップ方式に対応しているか確認しておく必要がございます。
よくあるパターンとして、
乗り換え先の携帯会社のみ対応しており、途中まで手続きをされて、転出元の携帯会社がワンストップに非対応のため、選択肢に携帯会社が表示されないケースです。
お申込み時に「転出元事業者」を選ぶ際に現在、ご契約中の携帯会社が表示されない場合はノンストップ非対応となります。
お手続き中に転出元のマイページへのログインが必要
MNPノンストップ方式にて乗り換え手続きをする途中にて、転出元の携帯会社の解約にあたっての重要事項に同意する必要がございます。
そのため、必ず転出元の携帯会社のマイページへのログインは必須となりますので事前にログインするための携帯電話番号、ID、パスワード等をご準備したうえでお手続きされる事をオススメいたします。
Web上での手続きとなる為、SIMの受け取りまでに数日かかる
MNPワンストップ方式の一番の特徴が手続きはオンラインに限られるという事です。
従来のツーストップ方式のMNPであれば、MNP予約番号の発行、契約のお申し込みともに店舗でのお手続きが可能でした。
そのため、乗り換え先の携帯会社に契約してから即日中にSIMを受け取って、開通する事ができました。
しかし、ワンストップ方式ではオンラインで手続きをされてからSIMがご自宅に到着するまで数日かかります。
したがって、SIMがご自宅に到着するまでの期間を考慮して、余裕を持って乗り換え手続きをする必要がございます。
- お急ぎの方はeSIMを選ぶという選択肢も!
物理SIMを選択した場合、配送されてから到着するまでに数日間ほど待つ必要がございます。
その反面、eSIMであれば最短で即日の開通が可能でお申込み当日から利用できます。
ただし、お申込みしたタイミングや混雑状況などによっては開通までの時間が変動する可能性があるため、いずれにしても時間に余裕をもってお申込みされる事をオススメいたします。
MNPワンストップによる転入・転出の両方に対応している携帯会社
(令和6年9月30日時点)
サービス名 | 開始日 |
NTTドコモ | 令和5年5月24日 |
ahamo | 令和5年5月24日 |
UQ mobile | 令和5年5月24日 |
povo | 令和5年5月24日 |
ソフトバンク | 令和5年5月24日 |
Y!mobile | 令和5年5月24日 |
LINEMO | 令和5年5月24日 |
楽天モバイル | 令和5年5月24日 |
日本通信SIM | 令和5年5月24日 |
mineo | 令和5年07月03日 |
センターモバイル | 令和5年12月01日 |
LPモバイル | 令和5年12月01日 |
IIJmio | 令和6年03月26日 |
NUROモバイル | 令和6年06月13日 |
イオンモバイル | 令和6年06月20日 |
BIGLOBEモバイル | 令和6年07月10日 |
J:COM MOBILE | 令和6年09月30日 |
今後について
携帯ユーザーがより簡単に自分に合ったプランに乗り換えられるようにする目的で2023年05月に導入されたMNPワンストップですが、国民への認知度は約14%程度に留まっています(※総務省が令和5年9月に実施した利用者意識調査の結果)
今後は手続きが面倒と考えている携帯ユーザーに対して広く周知することが重要となってきます。
総務省はMNPワンストップという新方式の導入により、簡単な手続きで料金プランの変更ができるようになった事の国民への理解の向上を図るため、SNS・デジタル広告等のメディアを活用した周知活動を実施予定との事です。
乗換え手続きを簡素化するためにMNPワンストップが開始されたものの、現時点で全ての携帯事業者が対応するまでには至っていません。
そのため、MNPワンストップ化を推進するため、ワンストップ未対応のMVNOについて早期導入に向けた働きかけなどを行い、ワンストップ対応事業者の拡大を推進していく予定との事です。
最後に
これから更にワンストップ方式の国民への認知度が広がれば、乗換え方法は従来のツーストップ方式からワンストップ方式が主流になる事が予想されます。
今まで予約番号を発行する手間を避けるために乗り換えるのを躊躇されていた方もいらっしゃるかと思います。
これからはより簡単に自分の生活スタイルに合った携帯プランを選択でき、選択肢の幅がより広がります。
顧客の流動性も高まるので、携帯事業各社から提供されるサービスも年々、高まっていくかと思われます。
読者の皆さんも定期的に携帯会社の見直しをされてみてはいかがでしょうか。